ニホンイノシシ



ニホンイノシシは、鯨偶蹄目イノシシ科の哺乳類です。

日本国内ではニホンイノシシとリュウキュウイノシシの2種が確認されており、
ニホンイノシシは北海道と沖縄以外、リュウキュウイノシシは沖縄のみに生息しています。
しかしリュウキュウイノシシは非常に数が少なく、絶滅危惧のレッドリストにも記載されているぐらいです。
なので日本でイノシシといえば、ニホンイノシシのことを指すと思って差し支えないでしょう。
以下このページでは、ニホンイノシシを「イノシシ」と呼称して扱っていくことにします。


ニホンイノシシ リュウキュウイノシシ
↑ニホンイノシシ(左)と、リュウキュウイノシシ(右)。リュウキュウイノシシのほうがひとまわり体格が小さい。


< イノシシの身体的特徴 >
イノシシは成獣で、体長は100cm〜170cm、体重は80kg〜180kg程度の大きさになります。
体毛は明るめの茶褐色〜黒褐色をしていて、その色にはやや個体差があります。
この体毛は非常に剛毛で、逆向きに触れたときにはかなりゴワゴワした感触を感じるでしょう。

またイノシシの子供の頃は綺麗な縞模様が体色に現れていて、
それが瓜の模様に非常に似ていることから、幼いイノシシはよく「うり坊」と呼ばれます。
この縞模様は木漏れ日の中では保護色の役目を果たすと考えられていて、
成獣まで成長して天敵がいなくなるにつれて少しずつ消えていってしまいます。
シマシマのままのほうが可愛いのに残念ですね(笑)

イノシシの下あごには牙が備わっており、
オスの大きな個体であれば、その長さは15cmを超えるほどになります。
下から生えて手前に湾曲している牙を下からアッパーカット気味に振り回すことによって、
対象物の肉をえぐりとり、大きなダメージを与えることができます。
人間にとってはこれがちょうど太腿の高さにあたるため、大怪我をさせられる危険性があります。

また意外に知られていないのがその身体能力の高さ。
普段はゆっくり歩いて過ごしていますが、いざ敵と対峙するとなると、
走れば時速40km、垂直ジャンプならば1m以上を飛ぶという脅威の身体能力をみせます。
しかも大抵の生物は鼻先が急所ですが、イノシシの場合は鼻先は強靭な武器です。
重さ70kgの岩さえも動かせるその硬い鼻先が、猛烈な加速をつけて突進してくるのはかなりの脅威。
実際に人間が大怪我をさせられた例は数多くあります。

ニホンイノシシ うりぼう
↑ニホンイノシシの牙(左)と、イノシシの子供「うり坊」(右)

また意外にも泳ぎが得意で、犬かきのような動きで池や川を、なんと時には海を泳ぐこともあります。
その目的は定かではありませんが、毎年中国地方から四国まで瀬戸内海を泳いで渡るイノシシがいます。
瀬戸内海ほどの距離を泳ぎきれる哺乳類は他にはなかなかいません。
いったいどこで泳ぎ方とか覚えるんでしょうね。

うりぼう
↑瀬戸内海を泳いで渡るイノシシ(2012年11月撮影)

< ニホンイノシシの主食 >
ニホンイノシシは雑食性です。
普段は植物性のものを食べていることが多く、ドングリなどの木の実、果実、タケノコ、地下茎、芋などを好みます。
動物性のものでは、ヘビやカエル、ネズミ、ミミズなども摂取します。
また近年では人間が出した生ゴミや畑の作物を狙って人里に現れることが多く、
人間との接触事故に発展してしまうケースが危惧されています(詳しくは後述)。

逆にイノシシの天敵となるのは、幼少期はキツネや野犬、フクロウ、カラスなど。
成獣になってしまえば日本国内においては敵は存在しません。
唯一クマがイノシシにとって危険ではありますが、
クマは積極的に生きている大型哺乳類を狙うことはありませんので。

ニホンイノシシ ニホンイノシシ


< ニホンイノシシの住みか・習性 >
イノシシは山に住んでいる、というイメージが非常に強いですが、
実はイノシシは山間部でも低山地域や平地、つまり人里にかなり近い位置に住んでいます。
自分の体が隠れるような草木が生い茂った土地、それも河川が近い湿地帯を好みます。

水場付近に住むのは、給水のほかにも水浴びや泥浴びをする目的があるためです。
イノシシはよく全身を塗らす様に水の中を転げまわり、ダニや寄生虫を落としています。

また理由はよくわかっていませんが、イノシシは小便を水の中ですることが多いようです。
しかし大のほうは普通に陸上でプリッと(笑)
どういう意図で小便だけ水中でしてるんでしょうね?

イノシシが夜間に人里にやってくるニュースなどのせいで夜行性のイメージが強いですが、
実際は昼間のほうが活動的に動いています。
夜間に人里に来るのは、そのほうが人間に見つからずにすむため。
そう、イノシシは学習能力が高くしたたかな生き物なのです。


< ニホンイノシシの繁殖サイクル >
イノシシの発情期は冬です。
この時期になるとオスのイノシシはメスを求めて徘徊し、
意気投合したメスと生殖行動を行います。
このとき一匹のメスを巡ってオス同士で争うこともありますが、
もちろんここでは強い方のオスだけがメスを獲得することができます。

無事に生殖行動を終えたオスはそこで休むことなく次のメス探しへ。
発情期が終わるまでオスは延々とメスを探し続け、生殖行動を何度も何度も行っていきます。

一方身ごもったメスのほうは草木で巣を作り、4ヶ月の妊娠期間を経て3〜6頭程度の子供を生みます。
そして子供がひとり立ちするまで一緒に暮らしていきます。
子供が成獣となって繁殖機能を持つのが約1年半。
そしてまたオスはメスを求めて徘徊を始めるわけです。

川の字になって寝るイノシシ うりぼうたち




< イノシシと出会ってしまったら >
イノシシは生息域が山間の低標高地域であるために、野生動物の中でも人間と遭遇しやすい生き物です。
基本的にはイノシシは臆病で警戒心の強い生き物であるため、
人間を見つけてもイノシシのほうから距離をとって離れていきます。
このへんはクマと同じですね。

ただし、いきなり角を曲がったら出会い頭に、というパターンは危険。
興奮したイノシシは人間を倒さねばならない敵とみなし、突撃してくることがあります。
前述した脅威の運動神経で突進されては人間はひとたまりもありません。

@イノシシと出会わない工夫をしましょう
山登りなどをするときにクマ対策として鈴を鳴らしたり、
皆で談笑をしながら歩くという手法がありますが、これはイノシシにも有効です。
イノシシは聴覚が非常に発達した動物ですので、人間の位置をこちらから知らせてやれば、
むこうのほうから距離をとってくれます。

Aもしイノシシと出会ってしまったら
もしイノシシと出会ってしまったら、まずはパニックにならないこと。
とにかく刺激をイノシシに刺激を与えないことを第一に考えてください。

十分に距離があるならば、ゆっくりその場を離れましょう。
もし不幸にも出会ってしまった距離が非常に近くて、相手がすでに威嚇行動に入ってる場合は、
目を見たままで決して背を向けずに後ずさりして距離をとっていきましょう。
背を向けて走って逃げると本能的に彼らは追いかけてきます。
これはイノシシに限らずクマの場合でも同じです。

ちなみにイノシシの威嚇行動は、背中の毛を逆立たせたり、
挙動不審に動き回ったり、牙をカチカチと擦り合わせて音を鳴らしたり、
後ずさりしながら前足で地面をガリガリ擦ったり、などがあります。
これらの動きをみせているときは要注意。

Bもしイノシシが襲いかかってきたら!
もしイノシシが突進してくるという最悪の事態になった場合。
真っ直ぐ走って逃げても、逃げ切るのは不可能です。
なんせ相手は時速40km以上で追いかけてきます。
高い場所に登る、遮蔽物を利用して逃げるのが一応の最善手です。

ただし、もし幸運にもジャンプ傘を持っていたならば目の前で勢いよく広げてやりましょう。
目の前で突然視界をおおう未知の物体に、イノシシは驚いて逃げていってくれます。

ニホンイノシシ ニホンイノシシ


< 民家や畑にやってくるイノシシ >
イノシシが家庭ごみや農作物を狙って人里に下りてくる行動が、近年非常に大きな問題になっています。
ゴミ捨て場や畑を荒らされる被害はもちろん、人間に対して突進したり咬みついたりするような事例が多く起きています。
ケガで済めばまだ良いですが、下手をすれば死亡事故にも繋がりかねません。
イノシシが出没する地域に住んでいる場合は、やはりその対策が必要になってきます。

@イノシシが近づかない環境作り
まずイノシシは自分の身を隠せる茂みのようなものが好きです。
逆に言うと、隠れられるものがない場所を嫌がります。
山から家・畑までの間に茂みがあるならば綺麗に刈り取りましょう。
身を隠せそうな遮蔽物も取り除けばなおベストです。

あと餌を見える場所に置かないこと。
畑で出てきた野菜クズなどは放置してはいけません。
ゴミも夜間に屋外に出さずに、収集車が来る直前に出すなどしてイノシシが近寄る理由を断ちましょう。
収穫時期になった農作物は後回しにせずに早めに収穫してしまいましょう。

イノシシ用の忌避剤を使用するのも有効です。
オオカミの尿の成分を使用したウルフピーという商品があって、
この臭いによってイノシシに限らず野生動物のほとんどが寄り付かなります。
値段はそこそこしますが内容量が多くて持続性も良いので、かなり長期間の効果が期待できます。


【野生動物忌避剤 ウルフピー】


Aもしイノシシが何度も来るようになってしまったら
イノシシは学習能力が非常に高いです。
そのためゴミ置き場や畑で一度オイシイ思いをするとそれを覚えてしまい、また再びやってきます。
一度味を占めてしまったイノシシは、茂みを取り除いた程度では引き返してくれません。

ゴミ置き場であれば、金属製のダストボックスを使うなどしてイノシシが手を出せないようにしましょう。
網やブルーシートを被せるだけではイノシシの前では全く役に立ちませんのでご注意を。

畑であれば、対策はちょっと大事(おおごと)になります。
まずは先に紹介したウルフピーの設置。

それで解決しないようであれば、イノシシが越えれないような壁を設ける必要があります。
柵でもいいですが、できればその場合は布などで目隠しを。
イノシシから視覚的に中が見えないことが大事。

壁の高さは1メートル程度で十分ですが、その上部には網などを外側にせり出すように張ってください。
よく刑務所の塀の最上部に有刺鉄線が内側にせり出すように張り巡らされていますよね?
アレに近しいのものを作ってください。
予算があるなら、網と言わずいっそ有刺鉄線でもいいです(笑)

理由は、イノシシが垂直ジャンプしかできないからです。
彼らは助走をつけたジャンプをしません。
手前に網(有刺鉄線)がせり出した壁であれば垂直ジャンプでは越えることができず、
イノシシは上からの侵入をあきらめます。

次に壁の下方向の処理。
イノシシはその強固な鼻で穴を掘ることができます。
生半可な壁だとその下に20cm程度の隙間を掘って、そこを無理やり押し通って入ってきます。
壁をより深く埋め込むように立てるか、
杭などで地面にも網を固定して土を掘れない状況にしてやりましょう。

ちなみにこの壁ですが、完全に囲まないと意味がありませんのでご注意を。
山側だけに設置してもイノシシは平気で回り込んできます。
道路側であろうが民家側であろうとおかまいなしです。
それだけ学習能力が高く、環境に慣れやすい生き物です。

Bどうしてもイノシシの被害を抑えられない、対策するのが経済的に難しい
この場合は最終手段としてイノシシを駆除しなければいけませんが、
イノシシを勝手に捕獲・駆除することは法律で禁じられています。
お住まいの自治体に相談してください。
被害が深刻であることを報告すれば自治体・猟友会が駆除に動いてくれます。

ニホンイノシシ ニホンイノシシ


< イノシシと人間の付き合い方 >
基本的にはイノシシは臆病な生き物で、子供のうりぼうなどは非常に可愛いです。
自然の中でその愛らしい姿を見つけた際には可愛がってあげたい気持ちもあるでしょう。
しかし、絶対に餌を与えて餌付けしないでください。

人間慣れして人間を恐れなくなったイノシシは、近隣の町に出没するようになり、
買い物袋をさげた人などを襲撃するようになります。
最近では神戸市中央区で5日連続でイノシシによる人間への襲撃事件が続き、
通学途中の女子生徒らを含む14人が怪我を負いました。
幸い命には別状はありませんでしたが、運が悪ければ万が一が起きていてもおかしくありません。

 あなたが餌をあげたイノシシが人を傷つけます。
 あなたが餌をあげたイノシシはそのせいで殺処分されます。
 それでもあなたはイノシシに餌をあげますか?

野生動物と愛玩動物は違います。
その区別を考えずに可愛がると、人間もイノシシもどちらも不幸にすることになります。
絶対に野生のイノシシに餌を与えないでください。


設置した金網を捻じ曲げて侵入していくイノシシの動画:


ビニールハウスを破壊して農作物を荒らすイノシシの親子の動画:



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